Diary No.5「対戦車戦闘攻撃の教育」
ラバウルに米軍の上陸間近かと予想した第8方面軍は、 今村方面軍司令官の命のもと、各隷下部隊に対戦車攻撃の訓練を命じた。 ツルブ・マーカス岬の戦闘、カ号作戦に基づく苦難の転進後、 わが第65旅団はバルチン山麓一帯に布陣。 われわれ歩兵第141連隊は「地獄谷」に分散配備していた。 対戦車攻撃訓練の命を受けたわが連隊は、連日東ゴム林付近に集結して訓練に励んだ。 戸伏大隊長から「対戦車戦闘攻撃の教育は塚本副官が担当せよ」との指示があり、 私は「待ってました!」とばかりに連隊全員の教育係りを引き受け、 道路上の対応、ジャングル内での対応とに分けて、敵戦車にどう対処すべきかを教えた。 ここで早速マーカス岬の戦闘での貴重な経験が生かされたのである。 敵に見立てた戦車は、ダンボールで造った「張りぼて」ではあったが、将兵一同真剣に取り組み、 いつ敵戦車が上陸して来ようとも「やっつけてやるぞ」の気構えに 一同意気があがったことは言うまでもない。 訓練終了後、大隊長から労をねぎらはれたが、 むしろ生きた経験がここで生かされたことに満足感を覚えたものである。 結果的には敵の上陸はなくて済んだが、何事にも「訓練」は やり過ぎることはないという教訓を改めて噛み締めていた。 人生、何が何処で役に立つか分からないことの教訓にもなればと思っている
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